ビジネス書の中の「仕事」はフェアではないんじゃないだろうか?

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このところビジネス書の類を読んでいて「フェアじゃないな」と感じることがあります。例えばこんな主張に接したときです。



  • スケジュールやタスクをパソコンで管理しよう。


  • リマインダーを設定しておき適切なタイミングで思い出しど忘れを防ごう。


  • 書類はEVERNOTEなどに集めてiPhoneなどの端末からいつでもアクセスできるようにしよう。


  • 様々な情報を効率的に収集するにはRSSリーダーを使って、いつでもどこでも見られるようにしておこう。


  • 離れた場所の人と連絡を取るときもSkypeやGoogleTalkがあれば連絡は取れるよ。


さらに踏み込んで、「 そうさ、インターネットに接続できれば別にオフィスなんか無くたっていいんじゃないか、別に会社に縛られる必要もないじゃないか、ようやくサラリーマンが「自由」を手にできる時代がやってきたんだ。だから最先端のツールで武装して、「個」として仕事をした方がいいんだよ!」という主張も見られます。


"仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)" (佐々木俊尚)なんて思いっきり上記のような主張ですよね。


わかるんです。理解はできるんです。それがスゴク便利で自由なワークスタイルだっていうことは。でも・・・どうしても「でも」と感じてしまうんです。


私はこういったITツールが基本的に大好きですし、病気のこともあり「効率化」できることに関しては積極的に取り入れているつもりです。しかし私が働いている業界が特殊なのかもしれませんが、どうしてもどう頑張ってもこのワークスタイルは適用できないんです。


実例を挙げましょう。


スケジュールとタスク管理。これはある程度可能です。が、様々な薬品を使う現場、細かい屑が飛び散る現場などでは、精密機器はあまり適しません。ラテックスの手袋してたらiPhone動作しませんし(笑) もちろんモノ作りの現場以外の営業マンなどは積極的に取り入れる部分だと思いますが、どうも聞くところによると、8/1に取ったアポが8/3に変更になって、また最初に戻ったなどという場合、8/1に最初にアポを入れたという履歴がなくなってしまうのでやりづらいということなどがあるようです。


書類をEVERNOTEなどに集約させようという部分。私の仕事で最も必要且つ重要な書類は図面と仕様書です。確かに出先で見られたら便利でしょう。しかしこれは極秘資料です。絶対に漏洩させるわけにはいきません。私の会社では、紙(原本)として保管し、必要な場合は上司の許可が要る仕組みになっています。基本的にコピー不可ですし、データ化もNDA契約に抵触場合があるので原則できません。


情報収集に関しても私の働いている業界の最先端情報はまずというか絶対的にインターネットで公表している類のものではありません。個人で書いているブログも散々探したのですが、どうも見あたりません。最新製品の心臓部分に関わる情報なのでどこの企業でも極秘扱いなんでしょうし、大学・研究機関もあまり積極的には情報公開していません。ある程度、技術的目処が立ったという情報ではすでに出遅れているので私の仕事としては意味がない情報となってしまいます。よってRSSで効率的にというのもどうも当てはまりません。


お客さんとの連絡に関しても、極秘事項に関するやり取りなので、Skypeなどではセキュリティ上どうしても心配が残ります。何しろ電話で話しをするのも嫌がるお客さんもいます。従って対面での折衝が必要不可欠です。


そしてオフィス。実験・検査・計測・制作などの作業があり、使う機械もまかり間違っても個人で購入できるような価格のものではありませんし、作業の連携が欠かせないので、「一カ所に集まり作業をできる場所」は必要です。外回りする営業の方でも一人の担当しているA社の進めているプロジェクトの問題点が、B社の進めている案件の一部分をちょっと変更すれば解消できるなんてことは日常茶飯事なので、営業も集まり情報を交換する場所が必要です。これもマル秘情報に関するやり取りなので、基本的に対面でのやり取りが必要です。


現状ではどうやってもできないんですよ。今「最先端」のワークスタイルとは相容れないんです。


この「最先端」のワークスタイルを実行している人は多分に"情報"と呼ばれるものを生産・加工して対価を得ている人なのでしょう。私たちみたいな"モノ"を作っている人、極端な例を言えば蒔絵職人さんや、靴職人さん、お豆腐屋さんなどには適用できない可能性が高いのではないかと思います。でもその指摘はどこにもなくて、「これが理想的な働き方だ」というのはフェアじゃないなと感じてしまうんです。


皆さんの仕事の"現場"はどうですか?ITを駆使すれば本当に問題点が解決されますか?それより「5Sハックス」や「品質管理ハックス」「カイゼンハックス」と言ったものがあればそちらの方が実践しやすいという部分ってありませんか?


モノ作りの現場にフォーカスした書籍でオススメがあれば是非教えて下さい。



1 コメント:

yosimidorin さんのコメント...

私の職場でも、事務室内に携帯等は持ち込み禁止ですし、仕事の資料を電子媒体にコピーすることや、Google カレンダーを見ることも出来ません。
社内の情報セキュリティ規程で定められていますので。
ただ、ほぼ毎日、見知らぬ土地に出張しますので、iphoneを徹底活用しています。
ビジネス書にでてくるような、効率化重視では、実際は厳しいことが多いですが、本の中のごく一部、ワンフレーズだけでも取り入れて実践できれば、いいのではと思っています。