BtoB型の商売で「Win-Win」は本当に成り立つのか?

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追記:R-style待合室にて、倉下忠憲さんが私が陥っていたものの正体を教えてくださいました。本記事をお読みになった上で、R-style待合室の記事をお読みいただくと、理解が深まると思います。倉下さん、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!

今回は私が、基本的なことが分かっていないことを暴露する結果になるだけかもしれません。このところの商売の中で、どうにも「Win-Win」というものが良く分からなくなってしまったのです。

超ド級に有名、且つ自己啓発書の頂点の一つとも言える『7つの習慣』の中に、第4の習慣として「Win-Win」という項目があります。最近では営業さんと商談していても、「ここら辺が落とし所では?Win-Winが保てるポイントだと思いますよ」とクロージングしてくる人もいらっしゃいます。(まぁ私からすると、当然ここからがネゴのスタートで、もう勘弁してくれと言われてからが本当の商談という感じですが(笑))

「自分も勝ち(Win)、且つ、相手も勝つ(Win)」確かにお互いにメリットがある仕事であれば、とてもフェアで良い考え方だと思います。例えば名匠が作ったお椀に価値を認めて対価を払うという行為は名匠は金銭的にWinでしょうし、買い手は価値を認め、満足しているのですからWinという関係と言えると思います。
しかし、ことBtoB型の商売で考えて見れば、これはどこか変ではないでしょうか?「勝つ(Win)」という概念がある以上は、どこかに「負け(Lose)」が生じているとも言えるはずです。敗者無き勝者はありえないのですから。


Aという製品を買いたいお客。売りたい販売者。というケースで考えてみましょう。お客は如何に安く買えるかがポイントです。販売者は如何に高く買ってもらうかがポイントです。

この商談では、お客との契約金額が原価を割ってしまったら、販売者は完敗です。逆に余りにも高粗利で販売者が売り切ったとしたらお客の負けです。
お客としては、一銭でも損をしないように他社からも相見積もりを取ったりして、何とか最安値で買おうとするでしょうし、販売者も限界ギリギリまで値下げしたり、プラスアルファの付加価値を付けたりと知恵を絞って、何とか買ってもらおうとするでしょう。
しかし、この構図になると、最後は相見積もりを重ねてジワジワ値下げ交渉を辛抱強く続けたお客が勝ち、販売者は原価ギリギリの利益しか出ない結果となるように思うのです。


この場合でも「お客は安く買えたからWin。販売者は些少なりとも利益が出たからWin」となるのでしょうか?ちょっと無理がありませんか?私には販売者は限りなくLoseだと思えるのですが・・・

仕事とは経済活動ですから、お互いの要望を何とかすり合わせて、利益を追求していくことだと思います。その利益とは第一に『お金』であり、その他に『技術的な経験値』や『他の顧客で使えるノウハウ』等という形の場合もあるだろうとは思います。

例えばB社がある新製品を作る際に、特別な技術が必要だったとします。その特別な技術を下請けが開発した。しかしB社にその技術は買いたたかれてしまったといった場合、「B社は『お金』で勝った。下請けは『技術的経験値』で得るものがあった(勝った)」ということと理解すれば良いのでしょうか?下請けの『技術的経験値』が他社に売り込めるものでであれば成り立つのかもしれませんが・・・どうなんでしょう?

つまり、BtoB型の商売として考えると、決して「私たちは『お金』で勝った。あなたたちも『お金』で勝った」とはならないのではないかと思うのです。あるのは「どちらかが勝つ」若しくは「even(引き分け)」そして「No-Deal(取引しない)」という選択肢ではないかと思います。

もちろん人間関係では別だと思います。相手を思いやり勇気を持ってこちらの立場を説明し、お互いにより建設的な関係を築くことは十分考えられると思います。しかし、あくまでBtoB型の商売という観点で考えると、私には「Win-Win」は本当に成立するのだろうかとこのところ、疑問に思えてならないのです。どなたか、BtoB型の商売でのWin-Winの具体的な成功ケースがあれば是非教えてください!

2 コメント:

h さんのコメント...

疑問点が「BtoBでWin-Winは本当に成立するのだろうか」ならば、金銭だけではなく組織体を維持していくという意識が双方にあり、有形無形に関わらずなにかを得られれば、理屈の上ではw-wは成り立つと思います。

ただ、個x個、会社x会社、国x国というように組織体が大きくなればなるほどw-wの関係が難しくなります。下世話な例ですが、担当者間ではw-wの意識で商談を開始しても、会社内部でにそれがきちんと評価されOKがでなければなりません。金銭のみを見て契約が甘いと言われるようであれば、現実w-wの契約を締結するのは難しいですよね。関係する人間の数が増えるほどその価値観の違いによる歪みが大きくなります。そのためにも会社としてのミッションステートメントが重要になるのだと思います。

教科書的に「w-wの関係とは」と言うのは簡単ですが、実感としてkazさんの言われるようにBtoBでw-wが成り立つのだろうかという疑問は自然な事(気取らず正直)だと思います。

Kazumoto さんのコメント...

コメントありがとうございます。

う〜ん、正直に言うとR-style別館さんでのコメントを拝読して、ますます混乱してしまっている状況です。ビジネスですから、金銭が絡む以上、やっぱり教科書通りにはいかないのではないかと。

トヨタやキヤノンのやっている徹底的なコスト削減のしわ寄せをくらっている下請けとトヨタやキヤノンの関係は「持続性」を維持する「信頼」のおける取引と言えるのだろうか?とかね。
品質に関しては「仕様」ですから、それを満たすことが前提。当然それ以上の仕事を提案しているかもしれない。でも最後はコスト削減の御旗の元に妥協しなければならない中小企業が多いように思うのです。キャッシュの問題で。

大企業はそれで市場からも評価されるのでしょうが、下請けが市場から評価されることってないでしょう?重要な技術を有した下請けの商売を拡大する手助けをしているというような話しも聞きませんし・・・。それは下請けさんの努力不足だと言われればそれまでですが、タイトな納期、無茶な仕様を実現するのに精一杯な下請けさんが救われる関係になっていないというのが、どうにも解せずにいます。

Win-Winの関係ではない方法で伸びている企業はどうなるのでしょうね?所謂上場企業の繁栄の下には沢山の中小企業がいることは明々白々ですよね。

先のトヨタで言えば、今でさえ徹底的なコスト削減を求められて必死で応えている下請けさんが、今回のプリウスの一件で更なる無理を突きつけられるような事態にならないかと人ごとながら心配になります。

例えその結果、それでトヨタは持ち直しても、ギブアップせざるを得なくなる下請けさんは少なからず出てくるだろうと思うんです。などと、お金が絡むと難しいなァと脳内実験を色々やっております。