雑感ー「良い子」を目指すと生きることに消耗してしまう

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昨日、愚弟が4月に入社する会社に提出する書類にサインして欲しいとやってきました。弟と私は12歳離れていますので、小さい頃から私が父親代わりで、彼の人生の岐路の殆どに立ち会ってきただけに、いよいよ独り立ちかと思うと、ちょいと感傷的な気分になりました。まだまだ子どもというか、遊んでる学生にしか見えませんので、ものすごく心配ではありますが(笑)

小さい頃、ああだった、こうだったと話していたら、弟の方から「そう言えばお彼岸だね」と言い、話しは必然と妹とのコトになりました。そして弟がとても私の心を揺さぶる言葉を残していきました。曰く

姉ちゃんは、小さい頃からバカだとか色々いじめられてたし、母さんからもしょっちゅう怒られていたし、兄ちゃんも怒ってばかりだったし、俺もバカにしてた。でもさ、俺ら、姉ちゃんがどういう子だったら良かったんだろうね?いつもさ、姉ちゃん、周りにいっぱい気を遣ってたでしょ?人の目をすげー気にしてたっつーか。思ったんだけどね、姉ちゃんは、何とかみんなに「良い子」だって言ってもらいたくて、姉ちゃんなりに頑張っていたんだと思うんだよ。でもさ、周りに気を遣うのって、周りの要望通りに自分を変えるってことでしょ?それってすごいエネルギー要るじゃん?ムリしているワケでしょ?だから、きっと姉ちゃんは、どこかでエネルギーが無くなっちゃったんじゃないかなぁ?でね、最後の時も「抵抗の跡は無かった」って警察の人が言っていたでしょ?きっとね、旦那の「一緒に死んでくれ」っていう願いを叶える為に最後のエネルギーを使っちゃったんじゃないかって最近思うんだよね。

衝撃的な言葉でした。もちろん妹のことは想像でしかありませんが、私には腑に落ちる言葉でした。確かに一生懸命、不器用ながらも「良い子」になろうとしていたのだろうと思われる記憶がいくつも出てきたからです。と同時に、これは、今の人が「疲れてしまう原因」なんじゃないかとも思いました。ちょっと過去を振り返ってみると、先生に褒められた時は「先生の要望や期待に沿った」ときでした。大人になってからも、上司から褒められたことは「上司の期待に応えられた」ときでした。いつからか、何かの基軸が「周囲の自分に対する期待を叶えること」になってしまっていて、期待を叶えるという無理をしているが故に、大げさに言えば生きることに消耗してしまうのではないかと思ったのです。

バブルに頃は良かったんでしょう。「売り込みに行かなくてもモノが売れた」と言われるような時代だったのですから、上司の期待に応えることも比較的容易だったのではないかと思います。しかし今は違います。必死に仕事をしても即成果に結びつくことは少ないでしょう。もちろん今の頑張りが、未来と繋がって花を咲かせる可能性はありますが、少なくとも「今すぐ成果を求める」上司や会社の期待に応えることは至難の業です。それでも基軸が「周囲の自分に対する期待を叶えること」になってしまっているので、無理に無理を重ねて、精神的に参ってしまうのではないでしょうか?。

「良い子」と呼ばれる為に、大人の目を気にして努力した子ども時代。
「良い生徒」と呼ばれる為に、先生の目を気にして努力した学生時代。
「良い部下」と呼ばれる為に、上司の目を気にして努力している社会人。
「良い上司」と呼ばれる為に、部下と経営陣の目を気にして努力している管理職。
「良い経営者」と呼ばれる為に、株主の目を気にして努力している経営者。

「金持ちになりたい」という人は、周囲の羨望を集めたいだけでは?
「有名になりたい」という人も、周囲の羨望を集めたいだけでは?

仕事の基本は「お客様を喜ばせること」だと私は思っていますから、お客様の要望を叶えるということは当然です。従って、仕事論的なことを言っているわけではありません。
自分を無理に欺いて、人に迎合する処世術を、皆、体得してしまっているような気がします。しかしこの処世術は何かオカシイと感じます。上手く言えないのですが・・・。かといって、自分中心に「ああしたい、こうしたい」と自分を主張し、我が出すことも、度を超すと結局オカシナことになりそうです。

もし昔に戻れるなら、妹に何と言えば何をしてあげたら、運命を変えられたんだろうね?と弟とあれこれ話しましたが、結局、結論は出ず仕舞いでした。ただ、知的障害というハンデを背負って居ながら、両親の、兄弟の、そして周囲の人の期待を叶えられるよう気を遣い、気配を伺い、注意深く生きるしかなかった妹は、生きることに消耗してしまったのは間違いなさそうだというのが弟と共通した認識でした。
この弟の言葉は私の中ではまだ全く消化できていない言葉ですが、何か重要なことを孕んでいる言葉だと思えてなりません。

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