武道の奥義「読み」で、仕事力を底上げする

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小学校3年の始めまで剣道を習っていました。第二次大戦を戦い、生き抜いたお爺ちゃんが先生だったのですが、この人がおっかない人で、稽古帰りはいつも半べそだった記憶があります。入門直後、先生がおっしゃったのは「剣術とは、人を殺せる道具の使い方を学ぶことだ」 と、今考えると「小学生に言うか!?」ということを言われたのを覚えています。

だから竹刀で稽古していても、面を食らえば「今脳みそ切れたぞ。お前」と言われ、小手を食らえば「手首から先が無くなった」といわれ、胴を食らえば、「あはは、身体が真っ二つだ」等と言われました。子供心に竹刀ではなくて、真剣だったら・・・と思わずにはいられず、必死に稽古していました。

剣術に限らず、おそらくあらゆる武術に通じるであろう奥義の一つに「読み」というものがあります。突きや蹴りの威力が凄いとか、内剄が凄いとかももちろん重要ですが、「読み」ができる達人と相対したらそれらは意味をなしません。相手の攻撃を発揮できないように先回りし、更に相手が思いもよらない技を使い、いとも簡単にねじ伏せてしまうのです。

以前TV番組で、合気道の達人が、「その場の状況に応じて臨機応変・千変万化に、技や動作は元より、自分自身を変化させること」が極意だと言っているのを聞いたことがあります。ちなみに私は高校の体育の授業で柔道をやるはめになり、弱っちいですが、一応黒帯を持っています。オリンピック代表の座を争った経歴を持つ、柔道の先生に聞いたことがあるのですが、「読み」と「想像力」はちょっと違うそうです。「読み」は場の空気の流れや気の流れと言った、大局を読めるかどうかだそうで、「こう動くはずだ」という当てずっぽうに近い想像力とは、違うのだそうです。

私は病気のせいもあって、人より長時間労働することは現状できませんし、他人とコミュニケーションを取るのもまだ苦手です。やりたくても残念ながら今は人並みにできないことがまだまだあります。でも、今の仕事場では営業部からもマーケティング部からも製造現場からもヘルプを求められたり、上層部からも意見を求められたりする程度には会社の役に立てています。これは私なりの「読み」の成果じゃないか?と最近思っています。

とはいえ別段難しいことはな~んにもしてません。誰かが電話している内容は聞こえる範囲で、聞いているようにし、日報も全員のものを全てちゃんと読んでいるので、「この件で時間を取られているのなら、別件はバックアップが必要そうだ」とか、「こういう動きになった以上、この製品の下準備は早めに進めておいたほうが良さそうだ」といった程度の「読み」をしているに過ぎません。

しかし、普通の人よりできないことが多いという圧倒的不利な状況下でも、普通の人の先回りして、きちんとした準備をしておくという「読み」を磨き、それを使えれば、病気に限らず厄介事を抱えている人が、普通の人と同等若しくはそれ以上に仕事をする有効な手段の一つになるのではないかと思います。

ちょっと考えてみると、人を読む。世相を読む。情勢を読む。時代を読む。世界を読む。景気を読む・・・と、なぜか大きいうねりを推し量ることを「読む」というのは、もしかしたら武道の「読み」に端を発しているのかもしれません。つまり、身近な相手、職場の雰囲気、 仕事の段取り、商談のクロージングポイントなどを「読み」、先回りして抑えてしまえば、その仕事の主導権を握れるチャンスが増し、互角に勝負できると思うのですがいかがでしょう?

この案件で問題になりそうなのはどの辺だろう?とか、今日のあの人の気分は良さそうか悪そうか?とか、そんな簡単な練習を毎日ちょっとづつ重ねていくだけでビジネスの「読み」は鍛えられると私は思います。

これが科学的に有効な手段か否かは分かりませんが、少なくとも私の実感としては、注意を払うべきポイントを先読みできれば、仕事力の底上げに役立つと思います。


蛇足:他方、読み誤った場合の例としては、現在の政治の混乱っぷりが良い例でしょう。“読み誤り”が重なっているように思えます。とっとと辞任すれば良いのにね。色んな政治家さん。退く時期を逸すると惨めなモノだと思いますがねぇ。
本来の政治は滅私奉公が基本のはずです。なのに、滅するはずの私心が顔を覗かせると、どんな大義名分(今で言えばマニフェスト?)を掲げても嘘臭くなるものです。国の未来という大局を「読む」必要がある重要な職務なのに、そういう自覚が乏しいのかもしれません ね。

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