身につけるべきは「健康リテラシー」-『ドクター由美の脳力育成HACKS!』川田浩志著 感想

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このブログでも何回か取り上げさせていただいた現役医学博士でいらっしゃる川田浩志先生の新著『ドクター由美の脳力育成HACKS!』を読み終えました。前著『HEALTH HACKS!』同様、この本でも中核をなすのは「エビデンス」つまり、しっかりとした科学的根拠のある脳力向上方法を取り上げられていること。そして、今回は「読みやすい物語形式」(物語自体はコテコテですけどw)なので、専門用語に悪戦苦闘することもなく、最新の科学の内容がスッと理解できます。

前著は「健康全般」に関して言及していましたが、今回は健康すらも司る「脳」にスポットを当てています。最初は「脳」にスポットを当てた以上、脳科学や大脳生理学などの研究結果オンリーかと思っていたのですが、中盤以降は心理学的側面も多く扱われており、後書きにもありますが「ポジティブ心理学」の研究結果にも光を当てています。故に「ストレス」や「うつ」なども取り上げられています。心理学を盛り込むことによって、理解しやすく、わかりやすい物語を、もっと身近な問題と読者に捉えさせ、高度な専門知識+身近な出来事が繋がり、丁度よいハーモニーを奏でる結果となっています。

何しろ現役の医学博士が書いていますから、「これをやれば仕事の処理速度が100倍になる」とか「こうすればあなたの脳も天才脳になる」とか「何かを聞き続けたら脳力が上がる」とかいう、素人でもどん引きするようなトンデモ論は一切でてきません。あくまでも「エビデンスがあるもののみ」です。

エビデンスがあるもののみを取り上げるという川田先生の強い決意と姿勢は、本書のあとがきの一節から読み取れます。

    いくら世界を股にかけて活躍されているような有名な方が、ご本人で試して効果があると言っている魅力的な脳トレの方法でも、私は決して試してきませんでした。それがどんなに素晴らしい人であっても、その人の個人的な経験や見解で良し悪しを判断された方法は、エビデンスとしては最も低いレベルのものしか持ち合わせていないと科学的には評価されるのです。巷にあふれている、さまざまな脳に関する書籍のうちの多くにも、同様の理由から手を出してきませんでした(もちろん素晴らしい書籍も、また多いのですが)。

この川田先生の矜持は本当に頼もしい限りだと私は思います。そして巷に溢れるトンデモ論は排除し、エビデンスというメスを用いて、多角度から検討された上で、「これが良いと現代の科学で立証されています」というもののみを示されています。不明な部分は「まだその辺はわかっていない」と正直に書かれています。とてもフェアでニュートラルなスタンスだと思います。

健康分野や脳の分野、心理学の分野は、正直言って何を信じて良いかわからない分野と言えると思うのです。例を挙げると、今であれば花粉症対策グッズ。沢山あるけど一体どれが本当に自分の症状に効くのかわからなくなりませんか?TVで扱われている健康によい体操だとか、身体に良い食品だとか、もう素人には判断不能だと思いませんか?心理学の分野では私は佐々木正悟さんと直接お会いしていることもあり、佐々木さんの言を信頼していますが、医療健康分野に関する本に関しては、川田先生の本が一番正確で信頼に足るものだと個人的に信頼を寄せています。

本書のテーマは3つ「正しい脳の仕組み」を学ぶこと(科学的根拠に基づいた内容)」+「その知識を生活の中に取り入れる方法の提案」+「脳科学の研究結果から導き出された「幸せになる方法」を知ること」です。

他の健康関連本と比べて大きく異なる点は、最後の「幸せになる方法」を取り扱ったことでしょう。脳科学の研究結果から「幸せとは何か」を提示されていらっしゃるのです。そしてその結論は大きく頷き、「確かに!」と膝を打つ内容です。「幸せとは一体何なのか?」と悩まれている方は非常に多いと思います。そしてビジネス書を読みまくり、実践しても思うような結果が出ず、余計に悩んでしまっている人も少なくないと思います。そうした方々には是非とも一読を薦めます。おそらく「幸せ」を勘違いしている可能性が高いからです。

「情報リテラシー」・「科学リテラシー」・「環境リテラシー」という言葉が有り、MindMapの開発者トニー・ブザン氏は「メンタル・リテラシー」を提唱されていますが、現代人(ビジネスパーソンであるか否かに関わらず)に真に必要なリテラシーは『健康リテラシー』だと私は思います。やっぱり健康が何をするにも土台です。最新脳科学の「正確な」知識を身につけ『健康リテラシー』を向上させることは必須だと思います。

現在、私は、薬物療法による鬱病の治療を行っていますが、本書によると「有酸素運動は、うつなどの気分障害の予防や軽減にも威力を発揮するとのこと」そしてその効果は「薬物療法に匹敵するという研究報告がいくつもある」そうです。正直に言って鬱と有酸素運動を結びつけたことがなかったので、とてもビックリしたことでした。毎朝エアロバイクを漕いでいたのは無駄ではなかった!!

健康に関する知識は、前著と本書、この2冊が現在一般人が入手できる本としては最高だろうと私は思います。この2冊で脳から身体まで、自分の身体についての正確な知識が身につくことは請け合いです!!

※蛇足:食事の重要性はとても良く分かるのですが、例えば1ヶ月分の健康レシピとか、コンビニで買うならこれにしておけみたいなものが欲しいなぁと思います。ついでに毎日同じモノを食べるというHACKは良いのか不安になりましたww

1 コメント:

川田浩志 さんのコメント...

このたびはご書評をブログにアップして下さいまして
まことにありがとうございました。

ご意見など、今後にぜひ反映させてまいりたいと思います。

のちほど、私のブログにリンクさせていただきたいと
思っておりますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。