ペーパーナイフというものがどうも苦手です。理由はペーパーナイフの材質にあります。普通ペーパーナイフと言われるものはステンレスだったり、プラスチックだったり、真鍮やガラス等、どれも冷たく硬質なものだからです。請求書の封筒は別として(^^;) 「暖かい手紙の封を切る」のに、冷たく硬質なものを使うのはどうしても合点がいかず、無論カッターナイフを使うなんて以ての外だと思うので、誠に不本意ながら指でビリビリと開封していました。
ところが、先日「我が意を得たり!」というペーパーナイフと出会いました。千葉県鴨川市の「古工房」さんの作品です。材質は木製。木製のモノはお土産屋さんなどでたまに見かけるものの、大体作りが甘くて手に取る気にもならなかったのですが、「古工房」さんのは思わず、釘付けになりました。家内曰く「瞬間移動した」と言わしめるくらいのスピードで駆け寄っていたそうですww
まず刃から続く土台の木は楓、グリップの部分は染井吉野という贅沢な材質。鋭利な刃からグリップへなだらかに膨らんでいく意匠。二つの異なる木がまるで一本の木から削り出されたかのように見事に一体化している卓越した技。そして一体どうしたら木がこうも気持ち良くなるのかというくらいツルツルで艶やかな触感。どの角度から見てもとても綺麗。使用感は何とも官能的。これぞ暖かな手紙の封を切るのにふさわしい逸品だと思います。
何より素敵だと思ったのは「ペーパーナイフですか?」と聞いた時、「いいえ、封書開封刃と呼んでます」と答えられたこと。「封書開封刃!そうか、ナイフなんて言葉を使うから違和感を感じるのか!」と思わず膝を打ちました。木だと切れ味が心配だと思われるかもしれませんが、全く問題ありません。サクッサクッと気持ち良く切ってくれます。使い込んでいって、切れ味が鈍ったら何度でも研ぎ直してくれる(木でも研ぐで良いのかな?)とのことですから、酷使しても安心です。しかも「これでも立派な刃物ですから」と織物のシースに入れてくれました。このシースも暖かみがあるもので、我が家のリビングテーブルの文具トレイに彩りを与えてくれています。
昨日、記事にした友人からの手紙や恩師からの手紙。デジタル全盛のこの時代に届く「手紙」は、大抵素敵なものでしょう。(請求書や督促状は除くww)届く数はとても少ないかもしれませんが、だからこそ大事にしたいし、大事に扱いたいものだと私は思います。そして大事に扱うには、この封書開封刃以上の開封用の道具はないだろうとツルツルのグリップ部分を撫でながら、一人悦に入っています。
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