Michael Jacksonの最後の授業。それは『Professionalの仕事』

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昨晩、レイトショーでMichael Jacksonの「THIS IS IT」を観てきました。終わった後にスタンディングオベーションが自然と起こった映画は生まれて初めての体験でした。

そこに居たMJはリハですからきっと歌声は6割、ダンスは5割くらいに意識的にセーブして練習しているように思いますが、それでも『圧倒的』です。そこに手抜きはありません。近年は、ゴシップ、裁判沙汰、奇行、興味本位もしくは金銭目的でプライベートもズタボロにされていたことを知らない人はいないでしょう。「Michaelは終わった」「Michaelは過去の人だ」「Michaelと言ったら整形と奇行」「今のMichaelが歌えて踊れると本当に思えるか?」等々、様々な報道が在りましたが、この作品を観れば、そういった発言をした人は恥じ入ることでしょう。セーブしていながら、これほどまでに圧倒的な歌声、50歳とは思えぬ圧倒的なダンス・・・この人は本当に亡くなってしまったのか??開始から本当に涙が止まりませんでした。きっとこの作品の音楽的な部分は多くのメディア・ブログに書かれるでしょうから、少し違った視点でこの作品を観てみることにします。

私は、1987年9月13日(当時12才)Badツアー・1988年12月24日(当時14才)Badツアー・1992年12月24日と31日(当時18才)DANGEROUSツアー・1996年12月15日(当時22才)HIStoryツアーとおそらくMJが来日したツアーはほぼ全て行っています。思い返せば1987年のBadツアーは私が人生で初めて行ったコンサートでした。私は最初に行ったコンサートで、世界最高のステージを観ることができた幸運な人間とも言えます。最初にBadツアーを観てから私の中でMJは別格の存在でした。私の中では、スーパースターといえばMJ以外にいません。MJのステージ映像、ショートフィルム・・・入手できる限りの映像を観てきましたが、ステージを作る舞台裏の映像は殆ど皆無だったはずです。MJがどういう姿勢で、態度で、ステージを作っていくのか?この映画はMJの仕事ぶり観ることができる貴重な映像です。

完璧主義者と言われていたMJですが、本当にその通りで、テンポ、リズム、無音状態の時の秒数、余韻の残し方、観客をどこで煽り、どこで焦らし、どこで陶酔させるのか、全てを丁寧に、微に入り細に入り、妥協無く作り込んでいきます。ネタバレしない程度に一部のシーンを取り上げます。キーボード担当との打ち合わせの際、「テンポが早い」「もっとじっくりと」と本当に細かく細かく何度も何度も要求するシーンがありました。イメージが伝わらない共有できないもどかしい所です。厳しい口調で高圧的に言うこともできたでしょう。しかしMJはそうしませんでした。口調はあくまでも穏やかで、一緒にベストなステージを作りたいという情熱を込め丁寧にイメージする音を言語化し伝えようとします。キーボード担当もその情熱に応えるべく、何度も何度も繰り返し、「マイケルにしかそのイメージはわからない。もっと具体的に言ってくれ」と食い下がります。結果、確かに素人が聞いても最初よりも良い演奏、MJらしい豊かな音になります。数々の有名アーティストと競演してきた天才ギタリスト、オリアンティですら同様です。彼女の渾身の演奏を「もっと高音を!ここは君の見せ場だ!」とより高い次元、素人が聞いても圧倒的な演奏へと一段階も二段階も上に引き上げます。ダンサーも皆、超一流ですが「Billie Jean」では子供のように目をキラキラさせ、MJのダンスを目に焼き付けた後のパフォーマンスでは更なる高みのダンスを観せてくれるようになります。

「真のProfessinalの仕事とは、全体を俯瞰しつつ、細部にまで目を行き届かせること。周囲の人間には「愛」を持って接し、丁寧に熱心に、忍耐強く接すること。諫言には謙虚に耳を傾け、自分が先頭に立って未知なる領域を切り開き、そしてその未知の領域に全員を連れて行くものだ」と全ての仕事に通じるProfessionalのあるべき姿勢を、映像を通じて身をもって教えられました。そんじょそこらの自己啓発書を読むより、この映画を観た方がよっぽど”仕事”というものを見つめ直せるのではないかとさえ思いました。

何よりも、児童虐待裁判の際、全世界が敵に回ったような、一般人には想像すらできない壮絶な苦境を経験し、多くのバッシングを浴び、プライベートを踏みにじられ、心がズタズタに踏み荒らされたはずのMJは最後まで「L.O.V.E LOVE」と全世界に、全世界の人々にこのメッセージを発信することを止めませんでした。それどころか「全世界の人々に感謝している」とさえ言います。そんな私たちとは全く別の次元の本当の意味で豊かでどこまでも懐の深い、素晴らしい人間性とその魂を持つMJを私は心から尊敬します。彼のような不世出な傑物、真のスーパースターはもう二度と現れないでしょう。私たちは彼が実現したかった世界、いつも歌を通じて、ダンスを通じて表現していた、人間のあるべき世界を実現するべく、小さくても確かな前進を続けていく必要があると思います。彼のように全世界に影響を与えることはできなくとも、一人一人ができることが何かあるはずです。

@haTshさんとの約束なので、超個人的MJベスト10を書いておきます。
  1. MAN IN THE MIRROR
  2. KEEP THE FAITH
  3. ON THE LINE
  4. SOMEONE PUT YOUR HAND OUT
  5. THEY DON'T CARE ABOUT US
  6. SCREAM
  7. GHOSTS
  8. JAM
  9. EARTH SONG
  10. BLACK OR WHITE
番外(^^;):WE ARE THE WORLD(DEMO)

MJの曲は全部大好きで、特にアルバム「DANGEROUS」には個人的に格別な思いがありますが、このところのヘビーチューンは上記の曲です。

この映画、通しリハの映像はないのかな?あるんだったら映画館で静かに観るんじゃなくて、武道館とかドームとかで叫びながら観たい!!

最後に、非常におこがましいけど、MJの3人の子供たちへ一言。
「君たちのお父さんは間違いなく素晴らしく美しい魂を持った偉大な人物でした。
このステージは君たちへ向けたお父さんの最後の授業だと思います。
お父さんの偉大さに押しつぶされることなく、堂々と前を向いて歩いていってください。」

1 コメント:

h さんのコメント...

kazumotoさんは愛の人ですね(もちろんいい意味で)。レビューが温かい。

1987年9/13のBADツアーは横浜ですよね。TV放映を見ました(26日分かな)。ライブパフォーマンスとしてはあの前後が一番だったのではないかと思っているのですごく羨ましい。

Dangerousツアー(福岡)は途中長い中断が何回もあり、正直ガッカリな感じだったんですよね。東京はどうだったんだろう。

THIS IS ITは平日に休みを取って観に行くつもりです。色んな感情がめぐってきそうでコワイ。

ベスト10頂きました。早速iTunesにkazumoto MJでプレイリスト作成。人のプレイリストで聴くと、曲を新たな視点で丁寧に聴き込めるのでいいんですよね。

一番意外(失礼)だったのがThey don't Care〜が入っていた事。自分のiTunesを見ると☆2つだったので。Dengerouがフェイバリットと書かれていたので納得しました。