展示そのものは意外に小ぶりなものだったのですが、私が知らず知らずに作っていたノートの描き方の常識みたいなものをぶち破ってくれて、ノートはもっともっと大胆に使って良いんだ!ノートって懐の深い製品だなぁと思える内容でした。正直、アート作品になっているのは全く意図が分からないものもありましたけどね(^^;)
しかし、展示会を見終わって、MoMA Design Storeで販売されている雑貨、文具、家具などを見ている内に、どうも違和感を覚えました。その違和感が一体何なのか?決定的だったのはコレです。
クリッピオーラ スパイラル ペーパークリップ
何だかわかりますか?これオフィスを掃除したら必ず一個は吸い込むと言われる(?)あのゼムクリップですよね?なんで、ゼムクリップをスパイラル型にした"だけ"で1,260円もするんでしょう?その"だけ"の部分がデザインであって、そこに付加価値が生じるというのは理解できるんですが、私の価値判断基準「使うときに100%の性能を発揮できるか?」に照らし合わせると、高価すぎて日常業務で意識せずに使える物ではありません。故にこの製品は「使えない」のです。
そうやって見てみると、確かに見た目が素敵だったり、持っていたら気持ちいいだろうというものは多くありますが、実戦で躊躇無く使い倒せるもの(価格も含めて)が殆ど無いのです。
実は小山龍介さんと土橋正さんが書かれた『STATIONERY HACKS!』を読み終わった後にも同じコトを感じました。使っていて気持ちの良い、気分良く仕事ができそうなおしゃれな文具がわんさか紹介されていますが、これらは、いつでもどこでも入手可能なのかな?と思える物も散見されたからです。
学生時代バイト先の法律事務所が標準採用していたエセルテ社のファイルが日本で入手できない時がありました。これはエセルテジャパンが撤退?したことが原因のようなのですが、エセルテで統一していた法律事務所の職員一同、非常に困ったことがあります。海外のステーショナリーを紹介するのは良いんですが、いざ追加や導入をしたいと思った時に買えないようではいけないのではないかと思うのです。
優れた道具とは容赦ない酷使に耐えられ、いつでもその性能を100%発揮してくれ、入手が手軽なものだと私は思います。さらに突っ込んで優れたデザインとは、いつでも手軽に安価で入手可能でありながら、どれだけヒドイ扱いを受けても、酷使されても、いつでもしっかり性能を発揮してくれる『デザイン』であるべきだろうと思うのです。
卑近な具体例を挙げると、三菱のPOWER TANKなんて屋外でも風呂場でも上向きでも書ける油性ボールペンが210円で手に入るという事実の方が凄いくない?ということです。どれだけ見た目がカッコ良くても風呂場で書きたい!という欲求に応えられなければ失格だし、寝たきりの状態の時に上向きで書きたいという欲求に応えられなければダメだと思うのです。でなければデザインじゃないんじゃないでしょうか?
フェラーリとカローラを同じ土俵で評価するのは難しいのと同じ難しさがあるとは思うのですが、より多くの人のニーズに確実に応えられるデザインはカローラの方だろうと思います。だからこそMoMAのようなデザインの権威のような機関はは、もっと日常に近いモノをクローズアップしてくれると、見慣れた日常の見え方がまた変わってくるだろうになぁと思います。
極論ですが優れたデザインを見たければ「MoMA」ではなく「商店街」の方が良いのかもしれません。商店街にある文房具店にも、鞄屋にも、家具屋にも、金物屋にも、日常に密着し過ぎていて意識せずに使っているが故に、見落としている(埋もれている)優れたデザインが沢山あるのではないかと思います。
とは言え、モレスキンはちょっと高価ですが、職場でアセトンをかけてしまっても(その時は少し溶けました)問題ないタフさがあり、私には無くてはならない製品として愛用していますし、(とても買えませんが)柳宗理も、イサム・ノグチも、ヤコブセンも、イームズも大好きです。当然、車も「一番乗ってみたい車は何?」と言われれば即座に「アストン・マーティン!」と答えますけどね(笑)あれ?結論としては、結局貧乏人のひがみなのか??(笑)
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