職人さんの現場にお邪魔して打ち合わせをしている時に、ふと棚に同じメーカーの同じ種類の精密ドライバーが大人買いしてあるのを見つけました。何でまたこんなに?という思いを抑えきれず、お聞きしたところ発見のある会話となりました。
「なんでこんなに買いだめしてあるんですか?」
「ドライバーなんてどれも同じと思うでしょ?でも微妙に使い心地が違うんだよ。だから自分に一番しっくりきたヤツを買ってあるんだ」
「それはわかるんですけど、何でこんなに・・・」
「知らないうちにさ、すこーしメーカーさんが変えちゃうみたいなんだよ。先端の角度とかね。道具は手の延長だからね。自分の手が知らない間に変わったら嫌だろ?」
「なるほどそうなんですか!そういえば●●というメーカーから先が丸くなってて色で判断できる精密ドライバーを出してましたよ」
「あー、知ってる。でもダメだな。あれは。」
「?何でですか?」
「いくつか理由はあるけど、一つ目はね。俺らが精密ドライバーを無造作に普通のペン立てに差しておくと思うか?そんなことしたら先端が簡単になめちゃうよ。立てるなら専用のヤツを使うね。それとあれ磁力付いてないだろ?磁力付きのものじゃないと効率が落ちるんだよ。だからダメ。要はね自分の手になれるかどうかなんだよ。他人の手だったら使いにくいぜ〜きっと(笑)」
この短い会話の中で私が腹の底からなるほどと思ったのは「道具は自分の手である」という部分と「見てくれより使い勝手」ということでした。この話しのあと一冊の本がアタマの書棚から引っ張り出されてきました。昨日の記事で私が(意外にも?)アウトドア野郎であることは告白した次第ですが、アウトドアの世界で僕の中には何人か憧れの人(一部の人は神の領域)が居ます。その憧れの人の一人、ホーボージュンさんの著書に「実戦主義道具学」というものがあります。
この本に登場する40点の道具たちは、すべて僕の私物である。何十回、何百回と現場に持ち出し、使い、使い、使い、使い倒して、「これぞ最高の道具だ」と、確信したものばかり
実戦で使える道具に対する愛情溢れる文章は本当に道具好きにしたらたまらないものがありますので、アウトドアが好きでない方にも読んでもらいたいと思います。
それはさておき、最近の「モノを減らそう」というムーブメント?を行う上で逆説的ですが、”モノ選びの座標軸”を決めておくことは重要だと思ったのです。
ホーボーさんの場合は「基準はサハラで使えるか」ですし、職人さんの場合「自分の手になれるかどうか」です。
じゃぁ、私は?
アウトドアグッズに関しては、ホーボーさんほど厳しい基準ではないものの「手入れをしていれば長期間使えるタフな道具」が私の基準です。私と同い年のコールマンのランタンなんてその代表格でしょうか。(実戦主義道具学の表紙と同型のランタンです)
職場で使っている物に明確な基準があるかと問われたらちょっと困ります。モノ作りに関わる以外の部分はありモノで間に合わせてます。イカン!
自宅は?自宅には色んなものがあります。洋服やらタオルやら、食器やら白物家電やら・・・これらを購入する際に明確な基準があったかと言われたら、ほぼ100%その場のノリで購入した物だらけです・・・
使うか使わないかという基準で減らすことも有効なんだと思います。でも例えば普段使わない喪服を捨てられるかと言われたら捨てられないですよね?となれば、使うか使わないかという基準だけでは減らせないという可能性があるのだと思います。じゃぁ、普遍的な基準なんてあるのかと言われればそれは私にはわかりませんが、とりあえず私は減らすとは逆の座標軸「使用するシーンで100%の性能を発揮できるもののみを残す」を採用することにしました。
先の喪服の例で言えば、お通夜の際に失礼のないデザイン、サイズであれば残しておいてOK。失礼になる場合は廃棄となります。
購入するときも使用するシーンを想定して、そのシーンに100%合うものであれば購入。すでに持っていたりしたら一旦ペンディング(良く言われる30日ルール適用)合わなかったら買わないと選択することができるようになると思います。
本番で使えないモノは結局は使えないモノだと思います。想定される本番で100%使えるものだけ残して、それをきちんとメンテナンスするようにしていけば減らす際も、購入する際もブレずに済むのではないかと思います。
減らすことばかりに目がいきがちですが、買うところに座標軸というフィルターをかけて進入を防ぐのも効果的かもしれません。
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