ストレスを上手に捌くコツー心の強さ≠硬さー

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スポーツニュースの解説では定番とも言える言い回しですが「精神的に強い・弱い」という言葉があります。オリンピックに出られるようなアスリートの精神が弱いとは、私にはとても思えないのですが、結果がふるわないと「精神的に弱い」と言われます。こう言われると、選手はきっともの凄く悔しいだろうなぁといつも思っています。もしくは、たまたまピンチヒッターで出た選手が2回連続でタイムリーヒットを打ったりすると「ここ一番という時に強い」と言われます。見えないところでもの凄い練習をしてきたはずなのに、たった一言で片付けられてしまうのです。素直に喜べないと思うんですよね。

この強い・弱いというのは、どうやらプレッシャーという「ストレス」に打ち勝れるか否かを意味しているようです。会社で仕事のプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、懸命に戦っていらっしゃる方も多いと思います。しかし素朴な疑問なのですが、果たして「ストレス」は打ち勝つ必要のあるものなのでしょうか?もしくは違った対応方法があるのでしょうか?

ストレス度合いには点数表があることをご存じでしょうか?有名どころですとアメリカのホームズ&レイによる「社会的再適応評価尺度表」というモノがあります。この基準によると、

  • 配偶者の死 ストレス度100%
  • 家族の死 ストレス度63%
  • 結婚 ストレス度50%
  • 失業 ストレス度47%
  • 退職 ストレス度45%
  • 友人の死 ストレス度37%
  • 借金やローンの抵当流れ ストレス度30%

などとなっています。どうでしょう?納得の行く数値でしたか?納得いこうといくまいと、医療現場では指針のひとつとして使われているようです。

しかし、このようにストレスを数値化することは、診察の目安としては役立つのでしょうが、それ以外には全く使えないものだと私は思っています。配偶者の死を例に考えると、夫婦二人三脚でいつも仲良く連れ添ってきたパートナーが死んでしまったら残された方のストレスはとても大きいものでしょう。しかし何十年も家庭内別居状態でパートナーが死んだとしても、先の人と同じストレス具合でしょうか?結構あっさりしたものかもしれませんよね。

また、自分が心底苦しく辛くふさぎ込んでいるときに、周囲の人から「ゴミ山で働く子どものことを考えてみろよ。それに比べたら幸せだろ?」とか、「生きているんだから、シッカリ生き抜かなきゃダメだ!」などと言われたらどう感じるでしょうか?結局、自分が辛かったら辛いのです。こう言われてもむしろ周囲に理解されないということが辛さに拍車をかける可能性があるだけですから、全く意味無しです。

ストレスの感じ方は、結局のところとっても主観的なものです。先の指標のような数字で説明されても、不幸の度合いを相対化されても、意味がないと思うのです。誰にとっても同じだけのストレスがかかることなんてものはありえないことですし、ストレスを溜めておける器の大きさも、お猪口サイズの人もいれば、ドラム缶サイズの人もいるわけで、個人差は非常に大きなものがあるはずです。

最近の雑誌やテレビではストレスはあって当たり前で、そのストレスには「打ち勝たねばならない」という論調が幅を利かせているように感じます。冒頭のスポーツニュースの言い回しなどは正にその一例でしょう。しかし別にいつも打ち勝つ必要があるものでもないと私は思っています。心の強さは硬さと同義ではないと思うのです。いつも剛の拳で突き進むのではなく、躱したり、流したり、しなやかに対応できる柔の拳で臨む方が良いと私は思っています。(北斗の拳のラオウとトキの違いみたいな感じですね)何故なら、剛の拳一辺倒では、自分の心がポキッと折れるのが先か、ストレスを粉砕できるのが先かの二択になります。私たちは常に様々なストレスにさらされていますから、確率的には心が折れる方が高いだろうと思うからです。

もし今、押し潰されそうなストレスを感じていて、どうやって「打ち勝とうか」と考えているようでしたら、少し発想の転換をしてみてはいかがでしょう。いつも打ち勝たねばならないと思うと余計に苦しくなります。何とか躱せないか?何とか避けられないか?まとめてではなくて、ちょっとずつ打ち返すことはできないか?そんな風にちょっと角度を変えて見ることが、ストレスを上手に捌けるようになるコツのひとつなのではないかと私は思います。

1 コメント:

Shinya さんのコメント...

こんばんは。全く同感です。
ストレスを克服しようとすると、余計にストレスを生みます。例えば、人間関係がストレス源だとして、相手に打ち勝って相手を変えようと思っても不可能ですよね。人は人によって変えられるものではなく、その人が自分で変わろうと思わない限り変わらないものです。
環境がストレスの場合は変えたり、物理的に遠ざかったりはできますが、例えば、会社などはなかなか変えることはできません。おっしゃられるように、やっぱりある程度受け入れるか、受け入れられなければうまくそらすかしないとだめですよね。
私は病気になる前は完全に力技で仕事してましたが、今は孫子の兵法の「戦わずに勝つ」というワークスタイルを身につけたいなぁと思っています。