コミュニケーションの「過剰」とその「質」について

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このところ、大分気持ちの浮き沈みの波が安定してきていて、普通に仕事をこなした後も、消耗しきってしまうということも減ってきました。そうなると不思議なもので少し欲が出てきます。私の目下の欲は「円滑に必要なだけのコミュニケーションを取れるようになること」です。従って、書店でもその手のジャンルの本を手に取り、日常のあらゆることを、その視点で見るようになっているのですが、その過程で、何だか違和感を覚えました。

私が感じる違和感は「現代の日本人は饒舌に過ぎ、不要なコミュニケーションに翻弄されているのではないか」という事です。そしてインターネットと携帯電話の普及が、饒舌さを加速させ、不要かもしれないコミュニケーションを増幅させているように感じてしまうのです。

同じマンションに住むお母さんネットワークを通じて聞いた話しですと、今時の小学生や中学生は、毎日何十、何百通もメールを打つそうで、それも即時返信が最早当たり前であり、マナーになってしまっているそうです。食事中もケータイは手放さず、電源を切ることなんてありえないことらしいです。さらにMixiやプロフ(ってのがあるんですか?)では読み逃げ厳禁だそうで、「足あと返し」だとか「コメント返し」をしなければ瞬時にイジメのターゲットになってしまうのだそうです。

さらに、愚弟の話によれば、今時の恋人の間で交わされるメールの量は尋常ではないらしく、まるでお互いがお互いを24時間体勢で監視し、万が一にも連絡がつかないと、それはそれは大変な揉め事に発展するというカップルも多いのだそうです。(愚弟には彼女が居そうにもないので、当事者になったことはなさそうですが)

普通のビジネスパーソンを考えても、仕事で百通前後のメールを送受信し、何十という電話に対応し、上司や部下、同僚との会話はしなければならないし、顧客や協力会社との面談・商談はあるし、加えて、セミナーや勉強会にも行っている人もいるわけですから、それはそれは膨大な数の言葉のやり取りを毎日行っているわけです。

もう、コミュニケーションの『量』は十分。お腹いっぱい。これ以上食べたら吐いちゃうよと言いたいところです。しかも今の言葉のやり取りはファストフードのような言葉ばかりじゃないでしょうか?ジャンクフードならぬ、ジャンクコミュニケーションとでも言いたくなるような。

ちょっと今日交わした言葉のやり取りの『質』に目を向けてみてください。今日話したものの中で、ハッとする言葉はありましたか?琴線に触れる言葉はありましたか?目から鱗の言葉はありましたか?逆に相手に気づきを与えるような言葉を投げかけましたか?あなただからこそ言える言葉を発しましたか?・・・意外にないと思うのです。何と言うか、じっくり手間暇かけて作られた手作り料理のような『上質』なコミュニケーションが少ないのではないかと思うのです。

とは言え、残念ながら、私は『質』を上げる秘策を持ち合わせているわけではありません。ただ会話には、「情報の伝達」という機能だけではなく、「関心」という「心理的資源」の交換としての機能があるのではないかと思います。よって相手にちゃんと関心を持って接すること、相手の話を関心を持って聴くこと。この2つを心がけてみようと思っています。量を減らすことは本当に難しいことですが、メールは重要なもの以外返信しないとか、会議を短くするとか、無駄話はしないし乗らないとか、商談内容を長さではなく密度で考え直してみるとか、地道なことをやるしかなさそうですね。

ちなみに、ヘンリー・D・ソローは著書『森の生活』の中でこんな言葉を残しています。

私たちは、わざわざ寄り集まって暮らし、邪魔し合い、ぶつかり合い、躓き合います。私の考えでは、私たちは社交のために互いに尊敬できなくなっています。社交を少なくすれば、大切なことを伝え合う、心をこめたコミュニケーションができるでしょう。


ほんの一瞬でも、お互いの立場から世界を見ることができれば奇跡が起こるだろう。

2 コメント:

コボリ さんのコメント...

コミュニケーションの「プチ断食」って必要かな、って思います。
ときどき、少しコミュニケーションの量を減らすと、気軽にコミュニケーションをとれる現状へのありがたみを実感できますよね。
それと、いつも顔をあわせているときは素直に感謝できなかった両親にも、離れて暮らすことで素直にありがいなぁ、と思えますね~。

Kazumoto さんのコメント...

コボリさん

コメントありがとうございます。
すっかり遅くなってゴメンナサイ。

私は、たまに一人でいる時間を確保しないとやりきれなくなっちゃう時があります。

たまにはコミュニケーションも情報も一切遮断して、禅寺でも籠もる時間が必要なのかも知れませんね。