少々話しは逸れますが、『THIS IS IT』のDVD特典映像の中で、公演を50回に増やすオファーをした時のエピソードが紹介されています。Michael Jacksonは2つの条件を出したそうです。ひとつは「ギネスに申請して欲しい」ということ、もうひとつは「家族と過ごせる家を確保して欲しい」ということです。この条件は私にとってはとても意外な条件に思えました。MJほどの人になれば、食事から洗濯まで身の回りのことは全て、その専門の人がやってくれるでしょうし、ホテルであれば最上階の超ゴージャスなお部屋でしょうし、当然プライバシーは守られ、セキュリティも最高レベル。寝具から調度品、アメニティに至るまで全て洗練された無駄のない空間に身を置くことができたはずです。しかしMJはホテル暮らしを嫌い、「家」を要求したというのは少々違和感を覚えずにはいられませんでした。
今回私が泊まった部屋は極々普通のシンプルな部屋でした。キチンと清掃が行き届いていて清潔でしたし、色合いもシックに纏められていて結構良い感じでした。しかし始めはどこか余所余所しく、何というか私を歓待してくれているようには思えず、どうにも落ち着けなかったのですが、部屋に荷物を置き、ジャケットを壁にかけたところで漸く部屋が私に馴染んだ印象を受けました。着慣れた愛用のジャケットを壁にかけて、それを見て初めてホッとできた自分を発見したのです。これは何だ?としばし考え込みました。
生活に必要な最低限のモノしか所有せず、シンプルに生きる。身軽で清潔で潔いとても素晴らしいライフスタイルだと私も思います。ヘンリー・D・ソローも「シンプル」に関しては、このような言葉を残しています。
シンプルに、シンプルに、生きよう。すべきことは百や千ではなく、二つか三つでいいのだ。
僕は確信している。もし人がすべて僕のようにシンプルに暮らせば、盗みや強盗なんて耳にしなくなるに違いない。そういった犯罪は、必要以上に所有する人が一方で、十分にものをもたない人がいる社会でのみ起こるのだ。
しかし、今回私が気づいたのは、必要最低限しかモノが無い生活では「心」は安らげないのではないかということでした。モノを沢山持っていることが=豊かであるとは私も全く思いませんが、どうやらモノを単に減らせば万事解決といくようなそれこそシンプルな問題でもなさそうです。でなければ極限にシンプルなホテルの空間で最初から存分に寛げなければオカシイでしょう?
私が思うに、必要最低限のモノしか所有しない生活とは「殺風景」と紙一重と言えそうです。そして殺風景の「殺」という字の相手は、私たちの心なのではないかと思います。故に、必要最低限+毎日愛でることができるだけの愛着品を持つこと。これが一般人にできる一番シンプルな生き方と言うことになるのではないかと思います。愛用品みたいなものがあるだけで、まるでそれがお守りのようにもなり、その場を自分の居場所だと特定してくれるような気がします。今回の私のジャケットがそうであったようにです。そんな生活必需品ではないけれど、大切にしているモノが全くなければ、心が寛げるだけの空間にはならないのかもしれません。どんなに楽しい旅から帰ってきても「やっぱり家が一番だ」というのは、家にあるモノたちが心をマッサージしてくれているのかもしれないなと思いました。
ちなみに・・・ソローはこんな言葉を残しています。が、私はどうやら前者のようです(^^;) たとえ前者であっても少しでも後者に近づけるよう研鑽していく道程こそがその人のライフスタイルであり、そのゴールのひとつがシンプルライフなのかもしれませんね。
粗野な人がシンプルに暮らすのは、無知と戯れているか、または怠惰によるものだ。しかし、物事を深く考える人がシンプルに生活するのは、そこで得られる知恵によるものである。
ちなみに・・・写真は「森の家」でソローが使っていたデスクのレプリカだそうです。あんなに多くの著作を残した人の机とはちょっと思えないくらい小さく、部屋もシンプルそのものです。これぞ知恵ある人の成せるシンプルライフなのでしょう。
5 コメント:
シンプルで必要最小限の物しか無い部屋。私は憧れるなぁ。。
うちの妻は逆に色々な物を置いたり、飾ったりしないと落ち着かないみたいなんですよね。
おかげで、我が家の雰囲気は私の志向とはまったく逆方向なんですよ。。。^^;
Moyoriさん、コメントありがとうございます。
そうですかぁ・・・以前こんなエントリーを書いていたのですが(http://kzs-gtd.blogspot.com/2009/09/hack.html)インテリアの方向性が違うと結構ストレスたまりますよね!
妥協ポイントが見つかったら是非、Hackとして教えて下さい(^^)/
妥協ポイントですか。。。
ワイフハックは無駄だと今日のTLで見かけましたよっ(笑)
はじめまして。
以前エンリーベグリンについて調べていてたまたまこちらに来て以来、ブログ度々読ませていただいてます。(エンリーベグリン好きなんです。)
シンプルと殺風景について、ほんと同感です!紙一重の大違いですよね。
この記事読んだ時にコメントするか迷ったのですが、ルーシーリー展行きたかったのに神戸在住なため行けず残念に思ってたところ記事にされていたの読んで、思い切ってコメントしました。
アカウントなど持っていないので匿名で失礼いたします。
ユカ
ユカさん(匿名さん?)コメントありがとうございます(^^)/
エンリーベグリンで検索するとこのサイト引っかかるんですか?それは知らなかったけど、嬉しい限りですねェ。
エンリーベグリンは革の品質も一流ですが、縫製の手仕事に唸らされます。本当に素晴らしい仕事だと思って毎日にやついています。
ルーシー・リー展は品数も説明書きもどの角度からも見られるように配慮した展示方法も素晴らしいものでした。もし東京に来られる機会があれば、是非ご覧になられることを勝手ながらオススメしますヨ!
今後ともどうぞヨロシクお願いします!
コメントを投稿