今までの上司はどちらかというと放任主義で、責任は取るから自由にやれという人だったので、このギャップに随分悩んだものです。
あまりに細かく小うるさいので、一回飲みに誘い出し、膝をつき合わせて面と向かって文句を言った事があります。じっくり私の意見を聞いた後、その小うるさい上司が言った言葉はとても意外なものでした。
俺は今、お前には仕事の正しい手順を覚えてもらいたいんだ。お前は伝票ひとつ丁寧に書いていないだろう?その適当に書いたモノを次の人が受け取ったあとのことを考えていないだろう?モノと一緒に動く伝票をいい加減に書いていたことがミスに直結する場面だってある。正しい手順を知らないと、飛ばしてはいけない大事な手順を無駄だ、近道だと勘違いする危険性があるんだ。近道を探しスピードアップする事は、歳を取っても出来る。むしろ経験を重ねた年寄りだからできる技なんだろうと思う。お前くらいの時は、ウサギじゃなくてカメのように地道な歩みが必要だと、俺は思うんだ。
この時の私は営業で実績も作り、とにかく「売る」ことばかりに目を向け、事務作業を舐めていたところがありました。報告書や社内で回す伝票、小口精算書類の類は邪魔なものだと決めつけていましたので、これには反省させられました。以来、この人がいう「正しい手順」を身につけるべくとにかく丁寧に仕事をするようにし、ようやく売るばかりではなく、会社全体の人の動き、モノの流れ、伝票の流れ、お金の流れなどに目を向けることができるようになりました。このことは営業の最前線を退き、補給兵や伝達兵のような裏方仕事についた今、実に役にたっています。営業目線で裏方仕事が出来る人はあまり居ませんので、これは私のちょっと変わった武器になりつつあります。
私はまだ長時間働けるだけの馬力が回復してないので、とにかく定時にあがって、身体と頭を休める為に、近道を見つけ、効率化を図るようにしていますが、最近この上司の言葉を思い出し、週次レビューの際に必ずこう問いかけるようにしています。
「これ、省いたらどんな影響があるかな?」
大した影響はないように見えても、意外に省いたらヤバイ作業というのもあります。「近道みーっけ!」と突き進む前に、その道がどうなっているか、地図で調べる余裕が必要なのかもしれません。スピードアップは歳をとったからこそできるという言葉も、なかなか興味深いと今になって思います。経験から見つけ出された近道と、ひょんなことから見つけた近道では、安全度が違うのかもしれません。
とにかく早く!最短距離を!より効率的に!といったかけ声が大声で叫ばれていますが、効率化した先に何をするのか意識せず、無闇矢鱈に近道を探し全速力でばかり走っていると、その近道には何か罠が仕掛けられているかも知れません。勿論カット出来る作業、無駄な作業はあるでしょうが、一見無駄に思えるその作業がゴールまでのプロセスの何に関与しているのか、良く考える時間も必要ではないかと思います。近道だと思って進んだら、獣道に迷い込んでいたなんてことにならないよう、ちょっとスピードを落として、じっくりプロセスを見直すような週次レビューをたまにしてみてはいかがでしょうか?
2 コメント:
納得です。私も復職した時に感じたのは、周りの皆んなが目先の事に一生懸命で善悪の判断すらついていない、人の事など構っていない状況でした。効率的にスマートにこなすのは、あくまでも善の上にあっての事。悪の上の効率化は破綻への一歩であります。善を貫くことはパワーを要し、悪に流れることは非常に楽です。しかし、私は人の道だけは外れない仕事をしたいと思っています。
Shinyaさん。コメントありがとうございます。
「人の道を外れない仕事」良いフレーズですねぇ!!パクらせてもらいます!!
二叉路でどちらに行くかという判断ですら、善悪も何も考えず、楽な方を選んじゃいますから特に注意が要りますよね。
とは言え、シンドイ方を選んでいるかは全く自信がありませんが(^^;)
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