欧米の仕事術から学ぶべきは「休み方」ではないか?

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このグローバル社会において、欧米人と日本人のような二項対立論は無粋な対立軸であり、意味をなさないのかもしれませんが、今回はあえてこの使い古された対立軸で「仕事」を考察してみたいと思います。
(※本記事では、「日本人」という言葉は、かなり幅広い年代を想定して書いています。必ずしも現役世代だけを指しているわけではないのでご了承ください。)
陶器を引き合いに出すのが一番早いと思うのですが、定規で引いたような直線的な美、写実的な美を好む欧米人と、歪みやいびつさに美を見る日本人という違いはあるように思います。これは性質的な違いにがあることを意味していると思います。

仕事に対する姿勢もこの例と同様に異なるように感じるのです。欧米人は仕事をなるべく早く片付け自宅に帰ることを優先し、効率的かつ集中的に仕事に取り組んでいると言います。そうであれば『GTD』も『7つの習慣』も『減らす技術』も、極論すれば「少しでも早く自宅に帰る為」に考案された仕事術とも言えるかもしれません。かたや日本人は(昨今はだいぶ事情が変わりましたが)長く会社にいることこそ美徳とでもいうか、欧米人ほど、早く家に帰るという衝動が希薄なように思います。故にスピードや効率より、居心地の良さのようなものを重視し、5Sや改善など、まずは自分たちの居場所を良くすることによって、品質を上げるという仕事法を開発したとも言えるかもしれません。
 
上記のような価値観を持つ欧米人には、意味もなく長時間会社に居る日本人は奇妙に映るのだと思いますが、長時間会社に居る人の大半は、その実「半分遊び」の要素も含んでいて、日本人にとって会社とは社交的なふれあいの中に、安心感を味わう一種のコミュニティとしての機能もあるのだと私は思っています。
従って、サービス残業といわれるものも、仕事の延長というよりも人間関係の延長線上という意味合いの方が強いのかもしれません。だからこそ、たとえやるべき仕事がなくても、家庭にいるよりも会社にいた方が落ち着くとさえ言う猛者もいるのでしょう。しかし欧米人にはこれは絶対に理解できないことだと思います。欧米では仕事は自分との戦いとであるとともに、他人との戦いでもあるわけです。詰まるところ欧米人にとって会社とは戦場なのですから。それは一刻も早く帰りたくなるわけですよね。


さて、こうした欧米と日本の仕事に対する姿勢の違いを見たところで、欧米人から日本人が学ぶべきポイントとはなんでしょうか?私はそれは「休むということの大切さ」だと思います。

日本では「休む」という義務どころか、その権利すら自覚している人は少ないのではないでしょうか?ご自分の有給休暇の日数、すぐわかりますか?休むことは恥ずかしいことだと思っている人も少なくないでしょう。仕事をしていることを誇りに思うのであり、休んでいる時を誇りに思うのではないのです。日本人は仕事こそ「聖」なるものであって、休みではありません。この考えは欧米人とは正反対です。

キリスト教では、休むことは最も「聖」なものですから、休日を英語で「holyday(聖なる日)」と呼ぶわけです。そして、休む人の邪魔をすることは大きな罪の一つとされています。仕事の邪魔はしても、寝ている人を起こすほど行儀の悪いことはない、というのが欧米人の考えです。欧米には「寝る人は罪を犯さない」という諺があるそうです。仕事は罪になっても休むことは罪にならないということですから、ずいぶんと徹底されたものです。

そこまで休日にこだわる、欧米人の休みの過ごし方は実に上手だと思います。家庭で美味しいお菓子を作ったり、ビーチで一日中日光浴をしていたり、庭の手入れをのんびりしていたり、日曜大工をしていたり、ホームパーティーで近所の人たちと交流したり。TVでそういう映像を見る度に「カッコいい」と私は思います。休日の過ごし方が上手な人は、とても素敵だと私は思います。

では、日本人はどうでしょうか?ちょっと想像してみてください。「丸一日、南国のビーチで好きに過ごしていいよ」と言われて島に降り立ちました。果たして何分デッキチェアに座ってのんびりしていられるでしょうか?「何かやることはないか?」と探し始め、海に入ってみたり、小枝で砂浜に落書きしてみたり、チョコチョコ慌ただしく動き回っているという結果になりはしないでしょうか?

あらゆる仕事術に関する本はどれも、効率的に、より速く、より正確に仕事を片付ける方法を教えてくれます。その本が欧米の本であれば「全ては休みの為に!」という思いが行間に込められているのかもしれません。しかし、私たちはそれを字面通りに受け取り、仕事術を駆使して、どうにかできた時間を「自己投資」に回し、さらに仕事を増やす結果になってはいないでしょうか?

先日の結婚記念日に家内と話しあって合意した今年の私たちの方針のひとつに「休日は王族のように過ごす」というものがあります。予算は超庶民でもね(笑)気持ちだけは王族の休日。王族は仕事の会話は一切しないでしょう。優雅に愛犬との散歩も自由なコースで行くようにする。料理の新メニューを開発してみたり(私に料理を仕込むという裏目的があるのでしょう…)、所有している品々を題材にイラストの練習をしてみたり…小さいかもしれませんが、丁寧に心を慈しむ日にしようと決めました。

作った時間をキャリアアップの為に使うのも一法でしょうが、心のキャリアアップということで、「休むことを練習する」ために使うのも良いのかもしれません。のんびり習い事(楽器とかペン習字とか?)でも初めて見るのも手かもしれませんね。

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